「膵負荷状態」の話(その6)

掲示板より

明らかな膵炎と診断されておられる方や膵臓そのものに起因する症状(消化不良症状や胃のあたり・上腹部・左胸部・背部や左半身の痛み等や糖尿病状態等)や画像診断所見(膵臓の腫れや超音波探触子による膵臓部分の不快感や痛み等)を呈しておられる方々は「膵負荷状態」の中でも重い方(進行例あるいは遷延例)と考えられることは以前触れました。しかし、治療やご本人の努力により「異常なし」と言われる状態になっても、膵臓が全くの健康状態にたどり着くまでは暫くの時間と“努力”が必要になります。そして、膵臓を良い方向に導いて行く途中で“努力”が正しいか否かの客観的な評価も重要となりますが、残念ながら、一般的な血液検査や画像診断による評価からこの判断を下すには無理があると言えるでしょう(「膵負荷状態」の中の氷山の一角に過ぎない「膵炎」の診断基準を用いた判断が当てはまりにくいのは当然と思われます)。
「膵負荷状態」が解消されれば、「膵炎」で悩むことも少なくなる筈ですが、「膵負荷状態」そのものの把握が一般的には困難と思われますので、取り敢えず“自己防衛”で対応することになります。
「膵負荷状態」が解消されつつある場合、以下のような症状の改善がみられると思われます。
○体温の安定化(「膵負荷状態」は微熱や低体温状態の原因になります)
○腹満の解消(適正な食事内容による消化不良状態の解消)
○朝食をしっかり食べられる(十分なお腹の安静が図られ、お腹(膵臓)に余裕が出て来た)
○朝食後1回だけの排便(適正な食事内容となり、腸の動きや働きが改善)
○よく眠れる(適度な運動や精神的な安定が図られ、夜の飲食等が適正化された)
○風邪もひかなくなる(免疫力の回復・維持)
○精神的な安定化(脳にも余裕が生まれる)
○頭痛・めまい・咳・むくみの消失(局所や全身の「炎症」(むくみ)の解消)
○口や喉の症状・GERD症状等の改善・消失(適正な食事による消化不良状態の解消)
○アレルギー症状の消失(“食べ過ぎ”の解消)
○「原因不明」の症状や病気の改善・消失(根本的な原因究明がなされた)
○その他
如何でしょうか?「膵負荷状態」(≒お腹(膵臓)からの「注意信号」)は様々な症状の組み合わせが考えられますので、ご自分に当てはめてみて下さい。
それぞれで見られるこれらの症状が軽くなったり、症状が出ても直ちに解消されるようであれば、“努力”が成功している証でしょう(個々のケースを細かく指導して行くのには限界がありますので、取り敢えず“自己防衛”を続けて行くべきです)。但し、これらの症状を薬で緩和・解消させたり、アルコールの力を借りて感じにくくすることは一時的には必要かもしれませんが、これらに頼り過ぎると強いしっぺ返しを食らうことも知っておくべきでしょう。常に「お腹(膵臓)を休める」ことが基本です。
小生の判断では、「膵負荷状態」が解消された際の血中リパーゼ値は一桁台で推移して行く筈です。アミラーゼは食事の影響があり判断が難しい場合がありますが、相対的に低下傾向にあれば、“お腹(膵臓)が休まって来ている”と判断されます。また、超音波検査上、膵臓そのものの変化のほかに、胆嚢や消化管の変化等も「膵負荷状態」改善の参考になります(EUSやCTやMRIは膵炎の診断や膵癌の検出には威力を発揮しますが、「膵負荷状態」の判断には活用されておりません)。『「膵負荷状態」の話(その5)』で触れた方のような血液検査上の消化不良状態の改善や糖尿病状態・弱い炎症像やアレルギー反応等の改善も判断材料につながります。
「膵負荷状態」が解消に向かえば、当然、膵炎の進行も食い止められる筈ですし、最大の関心事である膵癌の発症予防にもつながって行くと思われます。
“努力”は一生続きます。膵臓は“変化する身体”を常に監視し、バランスが悪くなれば、その人が気付くまで再び「注意信号」を発し続けます。この為、根本的なお腹(膵臓)の強さ(弱さ)を把握しておくこと、お腹(膵臓)が弱くなるタイミングを知っておくことも必要になりますし、ストレスや体力の低下につながりにくいような形で常に身体を動かすことや規則正しい生活・上手な気分転換等が「膵負荷状態」の改善や予防に貢献することも以前触れた通りです。
日本人は根本的に膵臓が弱い体質を持っています。「膵炎」や「膵負荷状態」あるいは糖尿病等で膵臓の存在を意識することは日本人の根本を意識することかもしれません。
今日、世界に認められつつある日本人の国民性(特長)はこのような体質と上手に付き合って来た多くの方々の“努力”の上に成り立っているものと思われます。「注意信号」を出さぬよう、日本人であることを常に意識し、“努力”を怠らぬことが健康維持のポイントと考えます。

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