「膵負荷状態」の話

膵臓関連

「膵負荷状態」を理解出来れば、早期の問題解決につながる筈です。

「膵負状態」とは?

生きて行く・成長して行く過程の中で不利益と思われている場面の一つが「膵負荷状態」と言えるかもしれません。多くは、日常生活・環境・心の動き等と体力(消化能力)とのバランスが崩れた時に「膵負荷状態」を呈し、この状況を打破する目的で膵臓は様々な情報を集め、本来の目的を果たす為の“導き手”として休まず働いていると思われます。しかし、このような場面で発せられるサインを「膵負荷」と捉えることは実際は非常に困難な場合が多く、大半の方々はいつまでも問題解決に至らず、場合によっては別の新たな問題に直面したり、“病気が病気を生む”ような状況を作り出すことにもつながって行くのです。しかし、膵臓のことを理解し、「膵負荷状態」を早期解消に導くことが出来れば、不利益のまま終わることなく、むしろ、将来につながる“意義ある経験”に変化して行く筈です。

「膵負荷状態」に対する認識と早めの対応が必要であると言えるでしょう。

「膵負荷状態」 の原因

体質的に膵臓が弱い方は勿論ですが、『膵臓について』の項でも触れたような膵臓が弱くなっている状況下でも「膵負荷状態」を示します。一方、体力があると過信している方や膵臓の存在に全く気付いていない方では、強い「膵負荷状態」に陥りやすく注意が必要です。膵臓が弱い方は幼い頃から無意識にお腹(膵臓)を守っている為、一般的にはひどい状況には陥りにくい傾向がありますが、膵臓(お腹)への関心が薄かったり・全く無視していた場合は“異状”に気付くのが遅れ、時にお腹(膵臓)からの“強いしっぺ返し”を受けやすくなります。また、胃切除術後の方も“慢性の早食い状態”下にある為、「慢性膵負荷状態」を呈していると判断されます。

更に、膵臓の存在を気付きにくくする原因がいくつかあることも知っておくべきです。具体的には、ホルモン(成長ホルモン/女性ホルモン/男性ホルモン/インスリン等)・若さ・運動・薬・肥満(高インスリン血症状態)・アルコール等ですが、時としてこれらが“大きな誤解”を生む原因にもなりかねません(『膵臓との上手な付き合い方』等の項でも触れます)。
膵臓が弱くなる状況を踏まえ、ご自分の膵臓の“強さ”と歩調を合わせて日々の生活を送るべきであり、根本的に弱い体質であるか否か・体力(消化能力)が弱くなっているか否かの確認を得ること・“体力”は有限であることを肝に銘じておくべきでしょう。

「膵負荷状態」の症状

「膵負荷」に関係すると思われる症状(注意信号)です。お腹以外の場所にも症状が及ぶことを是非知っておいて下さい。症状(注意信号)の出し方にはいくつかの特徴が見られますが、それぞれが複雑に絡み合って“異状”(不具合)を形成します。いずれの場合でも「お腹の安静」が問題解決の基本です。

膵臓以外の炎症(むくみ)に起因する症状:

発熱・頭痛・痙攣・めまい/耳鳴り/難聴・甲状腺腫・無呼吸発作・咳嗽/呼吸困難・湿疹/喘息/蕁麻疹等のアレルギー症状・再燃性あるいは難治性の感染症・種々の痛み(整形外科疾患症状)・神経疾患症状・前立腺肥大・局所のむくみ等

自律神経系の不安定状態に起因する症状:

不眠・うつ等の精神科疾患症状・動悸/不整脈・いわゆる「自律神経失調症」・いわゆる「更年期障害」等

適正な食事に戻す(お腹の安静を守る)為の症状:

体重変動・貧血(低栄養状態)・口腔/咽頭の症状(口渇・口内炎・味覚障害・咽頭違和感等)・顎関節症・食事アレルギー・食道逆流症(GERD)・過敏性腸症候群(IBS)・原因不明の腹部症状・便通異常・そ径ヘルニア等

膵臓の腫れ(炎症)に起因する症状:

微熱・胸痛・胃痛・上腹部痛・機能性ディスペプシア(FD)・背部痛・肝障害・胆石形成等

【補足】:胆石症は「膵負荷状態」の原因ではなく結果であり、機能性ディスペプシア(FD)も膵負荷そのものにごく近い状態と考えられます。膵負荷の程度が強ければ、“明らかな膵炎”に起因する症状が前面に出るかもしれません。消化器系以外に、限られた狭い空間(脳/眼/内耳等)・外界と接し刺激を受けやすい部位(気道/皮膚等)・常に負荷が加わっている部分(腰/下肢/手指等)・体質的に弱い部分・過去の炎症発生部位等からの不具合が生じている場合が多い筈です。また、膵臓が存在する部位に一致すると思われる“左半身の症状”として表現されることもあるかもしれません。

「膵負荷状態」診断のポイント

下記のポイントに沿って、「膵負荷状態」を突き止め、問題解消の道を探って行きます。

○「膵負荷状態」下にあるか否かの診断(問診・体温・自他覚所見・超音波所見等による)

○影響・修飾因子の特定

○根本的な体質・体力(消化能力)の把握

○異常所見(血液・尿検査上の膵負荷像・消化不良像・微細な炎症像等)の有無の確認

○治療および治療効果判定

○経過観察

【補足】:問診内容(既往歴・現病歴・体格・体重の変動・便通・食事内容等)・他覚的所見(体温・体格・腹部所見等)・超音波像・尿所見・血液所見等により、各項目の結果を踏まえて総合的な確認作業を実施して行きます。症状の変化・食事療法や膵炎治療薬投与等による効果判定も“診断的治療”として有用です。

「膵負荷状態」からの脱却のポイント

下記を確実に実行することが問題解決につながります。

○今迄持っていた「膵臓」(お腹)のイメージ(固定観念)を払拭すること(「膵臓」が見えてくる筈です)

○早期に“異状”(「膵負荷状態」)に気付くこと

○早期に十分なお腹(膵臓)と身体の安静を守ること

○自分の体質・体力(消化能力)とその限界を知ること(過信しないこと)

○病状に合った薬を選ぶこと(場合によっては、薬に頼り過ぎないこと)

○切り替え・割り切り上手になり、極力、自分のペースを守ること(負担となるものを控えること)

○刻々と変化する消化能力のハードルを意識した生活・食事を続けること

○適度な運動を確保すること

○理解者を得ること

○過度なストレスを避け、上手な気分転換を図り、徐々に体力(消化能力)の回復を図ること

○なるべく酒や薬に頼らずに余分な不安を払拭し、自分の身体や行動に自信を持つこと

○最終的に、規則的な生活習慣を身につけること

○同じ過ちを繰り返さないこと

○膵臓のことを良く知る医者に出逢うこと

【補足】:一端、悪く(弱く)なった膵臓を元に戻すにはある程度の時間が必要です。良くなったり・悪くなったりを繰り返すこともあるかもしれません。焦らずじっくりと構え、ご自分を信じ、今やるべきことを確実に実行して行きましょう。真面目な努力に対して「膵臓」は必ず応えてくれる筈です。

「膵負荷状態」と生命保険について

生命保険加入の際等に「膵臓」という語句が問題になる場合があります。一般的に診断されている膵臓の病気と「膵負荷状態」とは全く次元が異なることを理解しておくべきでしょう。

「膵負荷状態」には様々な症状が見られますが、お腹の症状は最後に現れる注意信号です。しかし、これらの症状でも「膵炎」と診断される段階にまで達していないのが一般的ですし、同様の症状を繰り返す場合であっても「慢性膵炎」には程遠い状態であると認識すべきです(但し、常に油断は禁物です)。そして、「膵負荷状態」から抜け出すことが出来れば、健康状態の回復にもつながり、むしろ、生命保険会社の世話になることは少なくなる筈です。

「膵負荷状態」が繰り返される場合でも「膵臓」という表現はせず、“胃腸が弱い”等という認識が妥当と考えます

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