「膵負荷状態」のお話(その5)

掲示板より

先日、このHome Pageで小生のことを知った女性が訪ねて来られました。
以前から「膵腫大」を指摘されておられ、“左半身”の痛みが持続するとの訴えで、過去のデータも持参されました。
結果は「膵腫大」は既に解消されており、過去の血液データからも膵臓への負担が軽減されていることが示唆されましたが、消化不良像はまだ残っており、これが左半身の症状(すなわち、「膵負荷状態」を疑う症状=膵臓から発せられる注意信号)につながっていると判断され、今の消化能力を意識した生活と食事を守るよう指示させて頂きました。
この方のように、膵臓の存在を意識するだけでもアンバランス状態は改善の方向に向かいます。そして、根本的な体質(体力・消化能力)を知り、今の限界を超えない生活・食事に徹することで「膵負荷状態」からの脱却が図れる筈です。しかし、安定期に至った後でも「膵負荷状態」に対する監視の目を怠らず、無理のない生活や精神的な安定を維持し(薬やアルコールの力をなるべく借りない形が理想です)、消化能力を増すための運動を続けること等を守ることが出来れば、『膵臓医者』の出番は更に少なくなるでしょう。
「膵負荷状態」が強ければ、膵臓そのものに“変化”を生じるのは当然です。軽い炎症の場合は「むくみ」だけで終わってしまいますが、炎症が強ければ一部あるいは広範囲に膵細胞が破壊され、壊れた膵細胞が再生を繰り返す過程で線維がはびこり「慢性膵炎像」の膵組織を呈します。また、再生が間違った方向に向かった場合には癌が発生することもあるかもしれません。有効に働く膵細胞の数が減少すれば糖尿病が顕性化したり、強い消化不良症状等を生じやすくもなる筈です(これらも膵臓から発せられる注意信号の一部です)。しかし、「膵負荷状態」に早くから気付き、膵細胞の破壊につながるような強い負荷を膵臓に与え続けなければ“膵臓の悩み”から解放されることも期待出来ます。希望を持って日常をこなして行くべきでしょう。
何度も話しましたが、「膵負荷状態」の症状はお腹だけとは限りません。様々な部分に炎症(むくみ)を生じさせ、様々な自覚症状を注意信号的に発します。例えば、アルコールの影響が少なくなった時期に「二日酔い」で見られる頭痛(脳のむくみ?)も「膵負荷状態」の可能性がありますし、口腔や喉の症状は食べ過ぎへの警鐘のようにも見えます。頑張り過ぎた後のストレスから、食べ過ぎた翌朝に眩暈や頭痛(頭を低くして寝ていた為、これらの部分のむくみが更に強くなっていることが原因?)を自覚することはよく見られる光景です。近年、増加傾向にある種々のアレルギー症状も食べ過ぎ(適正な食事でない状況)に対するお腹からの注意信号とも考えられます。これらのサインを見逃さず、早い段階で「膵負荷状態」に気付き、お腹(膵臓)の安静を図ることが出来れば、「膵臓」で悩むことが少なくなるのも当然です。
小児期、細身・コンパクトな体型を持つ方は特にお腹(膵臓)の働きが未熟であると推定されます。消化能力が弱いのに成長期のホルモンが消化能力以上の食を要求し(場合によっては、早く大きくしようとして無理矢理食べさせられて)、お腹(膵臓)に過度の負荷を加え感染症の繰り返しやアレルギー症状等の重症化・遷延化を生じやすくしているとも考えられます。また、消化不良が強ければ成長にも影響を及ぼしかねず、小さい頃からお腹を意識して「適正な食事」を守ることは、一生の健康維持に大きな影響を与えると信じます。
小児やお年寄りは勿論ですが、お腹(膵臓)の弱い方(体力も弱い方)も早めに“異状”を感じ、直ちにバランス良い状態に戻せるようにして大きな病気になるのを防いでいる筈です。しかし、これらのサインを“邪魔者”と捉え、安易に薬やアルコール等で症状を消してしまうのは考え物です。常に“冷静な判断”が必要です。
単なる「食べ過ぎ」だけに限らず、消化能力のハードルを下げることにつながる精神的ストレスは膵臓をコントロールする上でも重要な要素です。お腹に余裕がなければ精神的にも不安定になりやすく、お腹と脳とは常に微妙な関係にあると言えるでしょう(パーキンソン症候群の患者さんも弱く・敏感なお腹を持つ方が多い印象です)。
『「膵負荷状態」のお話』が皆様の「安定剤」として少しでもお役に立てればと感じる次第です。

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