膵臓について
膵臓は胃の後方に位置し、消化を助け・血糖をコントロールする以外に、胃と腸の状態を常に監視し・最適な状態を保つという大事な働きを担っています。
膵臓の最も重要な役割は、人の身体を見守ることにあります(愛情深い母親のように)。
一方、不健康状態になりそうな場合、膵臓は早期に警告を発します(うるさい母親に変身します)。更に、対応が不十分だと、明らかな病気を発症させます(怖い母親状態です)。
この“有難い母親”的な膵臓の存在を理解し、膵臓から発せられる様々な警告(注意信号)を解消に導くことが健康維持の秘訣と言えます。
当院では、『川嶌流の超音波検査』を通じて知り得た膵臓の”深遠”な魅力を随時、皆様にお伝えして参ります。
詳細につきましては『膵臓医者Blog』もご参照下さい。
川嶌流の超音波検査
先日、久し振りに小児科学会栃木県地方会に足を運んでみた。栃木県での小児科医療の中心的な役割を果たしておられる先生方からの発表に興味を持ちながら拝聴する中、懐かしい症例にも出会うことが出来た。 その症例は先天性胆道閉鎖症の症例で2枚の超音波画像が呈示されており、一方は胆嚢部分、他方は嚢胞様に拡張した胆管部分であり、前者の所見からは肝臓の慢性変化が、後者からは胆道内圧の上昇機転が働いていることが示されており、最終的な術後の肝組織像からは胆管周囲の繊維化が確認され、大学病院時代に熱心に取り組んでいた肝疾患の超音波診断の醍醐味に久し振りに触れることが出来た。
一方、日常の診療に眼を転じてみると、このような肝疾患例に出会うことはごく稀であり、典型的な超音波画像を示す教科書的な症例にもあまりお目にかからない。それは何故か・・・?西洋医学を学んだ我々は懸命になって“病気”を見つけようとし、保険診療に沿った治療を実行する。しかし、訪れる患者の多くは症状があっても病気にまで達していない場合が多い。だから、病院時代に培われた知識があまり役立たない。開業当初、超音波検査を実施しながらこのことを痛感する毎日であった。
第一線の開業医のもとには様々な患者が訪ねて来る。小児もその中の一部であるが、本人からの訴えが少なく、危うい存在でもあり、医者が対応に苦慮する場面も多く、中には“小児お断り”の姿勢を貫く先生もおられると聞く。小児に限らず、最初に接した医師が如何に適切な初期対応をこなしていくかが運命を大きく左右するのは体力の劣るケースの場合特に重要なことと言える。 小児は大人とは異なり、バランスが悪くなると直ぐに症状を出してくれる。僅かな変化で症状を出す小児の身体を知ることは「どうしたらバランス良い状態を維持出来るか」のヒントにつながるかもしれない。 小児の病気についての勉強会に足を運ぶ理由の一つは「初期対応を誤れば、こんな病気になるのかもしれない」という確認を得る為でもある。更に言わせて頂くと、年齢が増すにつれ、我々は子供時代の持って生まれた体質に戻って行く可能性があり、小児期の身体の特徴を理解することが個々の症例の問題解決の重要な糸口になると感じている。
これらの解釈は小生が大学病院時代から熱心に取り組んで来た『病院レベルの超音波検査』を一端リセットすることで初めて得られたものである。 病気を見つける手段としての超音波検査は開業医には殆ど役立たずと思われたが、症例を重ねるうちに根本的な体質や僅かな身体の変化を捉える『川嶌流の超音波検査』が非常に頼もしい存在になって来た。中でも、「膵臓を介してお腹の状態を診る」という独特の手法は様々な場面で活用可能であり、新たな手段として診療の効率化と質の向上につながると信じる。
海外からの習慣や文化を抵抗なく受け入れ、情報過多や競争社会の中で生きているお腹の弱い(体力のない)我々日本人は自分を見失いつつあるようにも見える。しかし、弱いからこそ自分の身体を十分理解し、弱いが為の対応を誤らなければ、早い段階でサインを出して周囲に“異状”を知らせてくれている子供達と同様、世界のお手本となる健康維持が可能となる筈である。(2013年秋、小山地区医師会雑誌掲載文)