最近のこのHome Pageに掲載されている投稿内容を拝見させて頂くと、もう少しの努力で更に落ち着いた状況に持って行けるのではないかと感じる方たちが多い、という印象です。そこで、皆様のヒントになるかもしれない最近のケースを紹介させて頂きます。

症例は“膵炎症状”の繰り返しで悩んでおられる20歳代の男性で、今年に入り2回の急性膵炎での入院履歴があるとのことで来院されました。
当院初診時のチェックは、問診・診察・腹部超音波検査(前処置は不要)、そして超音波検査後の尿検査(膵負荷が強い症例では膀胱の周りに少量の腹水が検出されることもあり、「膵負荷状態」の程度を知る指標の一つとしておりますので、可能ならば尿を我慢した形での検査が望ましいところですが、絶対的なものではありません)をさせて頂きました。
この方は、前医の画像診断では特に異常は検出されておらず、自覚症状と並行する形で血液の膵酵素の上昇を繰り返していた方ですが、小生が拝見した超音波検査結果は、膵臓に慢性膵炎像は見られず、「膵臓の働きの非常に弱い方・今までも膵負荷を繰り返しておられた方・そして、今も「膵負荷状態」にある方」というものでした。後日判明した尿検査の結果もこれを裏付けるもので、「僅かなお腹の刺激に対して敏感な反応を示す膵臓を持ち、今もかなり強い「膵負荷状態」にあり、体調不良時等には血液検査の異常を呈してもおかしくない状況」と判断されました。
“現状打破”の為に膵臓の十分な安静(「膵負荷状態」に起因すると思われる様々な自覚症状(不具合)を生じなくするような“十分なお腹の安静”が必要です。膵炎治療薬服用による膵炎の“鎮静化”だけでは膵臓の十分な安静にはつながりにくいかもしれません)とリパクレオンの処方(消化酵素剤は弱くなっている膵臓働きを一時的に補う目的での服用ですので、膵臓の働きが回復すれば継続的な服用は不要となる筈です)で経過を追い、1か月後に実施した血液・尿検査では膵負荷の指標は解消されておりました。今後、暫く経過を追うことと致しましたが、今までと同様のトラブルは起こさなくなって行く筈です。
この方のように、「膵負荷状態」を確実に拾い上げ,患者さんが納得され、ご自分の身体(お腹)を良く理解し、十分な安静(身体・心・お腹)を守ることが出来れば、自然と良い結果につながって行くものと考えます。
膵臓は精神的・肉体的に厳しい状況に置かれた方たちを何とか守って行こうと働いている大切な臓器です。膵臓のことを知れば知るほど、その奥深さ・有難さを痛感することになるでしょう。そして、そのような境地に達することが出来た方たちには、母親のような存在の膵臓は、いつか満足した姿を見せてくれる筈です。