ご存知の通り、膵臓に関係した“明らかな”病気群です。早くからお腹(膵臓)の大切さを意識すれば、これらの病気で苦しまずに済むかもしれません。
ある意味では、初期糖尿病状態は“膵臓の異状”を伝えてくれる注意信号の一つと言えます。

「シックデイ」は正に「膵負荷状態」そのものと思われますし、体調不良時の過度な飲食がⅠ型劇症糖尿病を生む素地を作り出し、一般的なⅡ型糖尿病も、体力の低下する時期(主に40歳以降)の運動と食事および体型とのアンバランス状態に対する警鐘であると考えます。早期にこれらの不均衡が解消されれば、当然、早期糖尿病状態からの脱却も可能でしょう。インスリンを意識した糖尿病診療も大切ですが、インスリン分泌の基本となる膵臓そのものが弱っているか否かの判断も血糖改善に貢献する筈です。
メタボ対策と同様、糖尿病状態の症例で最も問題になるのは身体の中に起こる「炎症」を如何にコントロールするかにあります。この炎症が感染症の繰り返し・動脈硬化の進展・加齢・更には癌の発生等につながって行くと考えられます。そして、炎症の発生に「膵負荷状態」が深く関わっている可能性があり、「膵負荷状態」を早期に診断し速やかに解消に導くことで、糖尿病の方々が持つ“悩み”の解決も期待されます。

膵臓の存在を強く意識した糖尿病診療は意義がありますし、初期糖尿病状態を知り,解消に導くことは、その後の健康維持に向けての大きなチャンスとも言えるでしょう。

慢性膵炎

いきなり慢性膵炎状態にはなりません。診断されている慢性膵炎は“氷山の一角”です。根本的な体質(体力・消化能力・精神的要素等)の変化・生活習慣・環境等の影響から長期間「膵負荷状態」が続いた結果、明らかな慢性膵炎が現れます。早期に「膵負荷状態」に気付けば、慢性膵炎への移行を食い止めることにつながるかもしれません膵臓に明らかな異常所見を認めない段階からでも、超音波上、「慢性膵負荷状態」の診断や病像の変化の把握が可能です。また、正常域に近い僅かな膵酵素(アミラーゼ・リパーゼ)の変動等からも「膵負荷状態」の診断が可能となりました。これらの客観的評価に加え、様々な情報を重ね合わせることで見つけにくいとされる「慢性膵負荷状態」を診断し、“明らかな慢性膵炎”の予防につなげることが実現可能と思われます。少しでも早い段階から(出来れば小児期から)ご自分のお腹(膵臓)のことを理解しておくことが肝要でしょう。

膵癌

慢性の膵臓の炎症の繰り返しの中から膵癌が発生する可能性があります。しかし、どのような症例が膵癌まで進展するのかが現時点では判然と致しません。
私が経験した中にも膵癌の存在が確認された症例が散見されます。これらの方々に共通して言えることは、「膵腫大」が常に認められたことでした。しかし、この「膵腫大」の程度は、いずれの症例でも『超音波診断基準』の“正常範囲内”のものでした。恒常的に「膵腫大」が認められる場合、「慢性膵負荷状態」にあると考えられますが、この中でどのような症例に膵癌が発生するのかを突き止めることが非常に重要になって来ます。早期に「膵負荷状態」が確認され、根本的な膵臓の強さや膵負荷の程度等が容易に診断可となれば、膵癌への移行を食い止める方策が見つかるかもしれません。いずれにしても、「慢性膵負荷状態」からの脱却は重要と言えるでしょう。